届けに行った私が、教わって帰ってきました。
初めて訪れたのは、タイのバンパライ村。電波も入らないような場所でした。
正直に言うと、出発前の私には「ランドセルを届けてあげる」という、少し上から目線の気持ちがありました。けれど、現地で過ごすうちに、学ばせてもらっているのは自分の方だと気づかされました。

村では、人々が集まって仕事をしたり、井戸端会議をしたりしていました。子どもを育てるのも、その子の親だけではありません。村全体で子どもたちに関わっている。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で見たような、ご近所付き合いがそこにはありました。
日本では、隣に誰が住んでいるのかさえ分からないこともあります。そんな暮らしに慣れていた私には、人と人との距離が近い村の光景が、とても印象的で、新鮮でした。
誰かと緩くつながっていて、いざというときには頼れる。「何かあっても、一人じゃない」と思えること。
それは、お金がいくらあるかとは別の、豊かさや安心なのだと感じました。

それまでの私は、ファイナンシャルプランナーとして「いかにお金を残すか」「どちらの利回りがいいか」「コストを抑えられるか」に目が向いていました。
もちろん、数字は大切です。でも、その人がどんな毎日を送り、誰と、どう生きていきたいのかが見えていなければ、お金の話だけをしても、本当に望む豊かさには届かないのかもしれません。
まず、その人にとっての豊かさを知る。そして、それを実現する手段として、お金をどう役立てるかを考える。
ランドセルを届けに行った先で、私は、自分の仕事で大切にしたい順番を教わりました。

